P-90

ハムバッカーPUやP-90など、ギブソンの楽器に搭載されているPUのポールピースにはマイナスドライバーで回して高さを調整できるように溝が切ってあります。 これは大変重要な設計で、1弦から6弦までの音量差を調整できるようになっています。 サウンドにこだわるプレイヤーは常にドライバーを持参しており、楽器の出力バランスが気になる場合には弦高やPUの高さ、ポールピースの高さを調整します。
ハムバッカーPU

P-90
一方ストラトに搭載されているシングルPUのポールピースにこのような溝が切ってあるものはほとんどありません。 ストラトの指板についたRや弦の太さを考慮して理想的なバランスになるように設定して固定してあります。 ところが現在普通に流通しているストラト用のPUは、3弦のポールピースが一番高く、それに対して2弦のポールピースが低くなるように設計されています。
 
Fender N3

達人的なリペアマンの腕前を持ってすれば、このようなPUでも各弦の音量バランスが揃うように絶妙な調整ができるようなのですが、普通の人には出力のばらつきを整えることがほぼ不可能です。 たいがい3弦の出力がやたら高く、2弦は遠くに引っ込んでしまいます。 なぜわざわざバランスが悪くなるような高さに固定しているのでしょうか。 これはストラトキャスター開発当時の設計をそのまま踏襲してしまっているからです。

本来、エレキギターの弦もフォークギターと同様に、3弦は巻弦でした。 現在ではジャズギター用のフラットワウンド弦など、よほどの太いゲージでないとこのような仕様は見られませんが、50年代ではそれが普通でした。 PUは弦の巻いてある部分ではなく、芯の部分の振動を拾います。 3弦が巻弦のセットの場合、3弦の芯よりも2弦の方が太く作られていますから、このような弦を想定してポールピースの高さを設定するとしたら、自然と2弦よりも3弦のポールピースを高くしなければなりません。

現代の最もスタンダードなエレキギター弦は3弦がプレーン(=裸の弦)ですから、当然2弦よりも3弦は太く、音量もあります。 ヴィンテージスタイルのPUをそのまま使ってもバランスが取れるはずがありません。 このようにサウンド面のデメリットが明白なのに、「いや、ストラトの伝統的なPUがコレだから」という理由で現代の弦にあわせたPUの開発がされていないのではないか、という気がしてなりません。

確かにストラトやレスポールのユーザーは伝統的なスタイルに固執することが多いように思えるので、現代のゲージに合わせたポールピースのPUを開発したところで売れないかもしれませんし、単に筆者が不勉強で知らないだけなのかもしれません。 これが現代のストラトの音だ、と言ってしまえばそれまでですが、それでもストラトを弾くたびに「何とかならんかなあ」と思います。

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