ギターの弦を緩めるか、緩めないか。(3)

ギターの保管において、弦を緩めるべきかそうでないか。
最終章である今回は、緩めた事による弊害の可能性から始めます。
 
え?緩める事で悪い事が?と思われる方もいらっしゃる事と思います。
「緩めない派」は、緩めなくても問題が無かったからだけではありません。
 
ギターを作る木材は、切り出した後シーズニングと言って一定期間乾燥させたり寝かしたりします。
これにより木材本来の持つ歪みをわざと出させ、それ以上変形しないようにするわけです。
しかしながら完全に変形が無くなるようにするためにはとんでもなく時間がかかってしまうので、
ある程度狂いを出させた段階でギターになります。
特に製造後10年を経ていない楽器の場合はまだ木材に狂いが生じる余地があると言われますが、
期間が10年なのか5年なのかはそれを言う人の見解に左右されます。
 
ギターになった木材は内部のトラスロッドと外部の弦との両側からがっちり固定され、身動きが取れなくなります。
このままタイムアウトになれば、余計な変形を許さずにネック材は完全に落ち着くわけです。
ところが弦の張力が無くなると、ネックを固定していた力の半分が失われる訳で、
締め付けから解放された木材は温度や湿度の変化も手伝い、本来変形すべき方向に自由に動く事になります。
それこそ順ぞりや逆ぞりなどという生易しいものではありません。ねじれることも、横に動く事もあります。
こうなってしまったら治すより買い替えた方が遥かに安上がりになります。
 
じゃあ、どうすりゃいいんだ!?とお思いになる事でしょう。
筆者はケースバイケース派ながら「緩めない派」ですので、
みすみすネックを訳の分からない方向に変形させるよりは緩めないほうがいい、という意見です。
 
ただし、クラシックギターとオベーションは緩めて保管した方がいいでしょう。
ギブソン(gibson)のアコギ弦は張りが強いので、ライトゲージでもブリッジはがれが起きた症例があります。
歴史上エレキでもアコギでもミディアムゲージが張られることを想定していますが、
現在の楽器ではそこまでの張力に耐えられない、もしくはそこまでの張力を想定していないものが存在します。
 
「緩めない派」としては、いちいち緩めなければならないような楽器は持ちません。
一方メーカー側としては、大事に保管されたギターだけでなく物置に放置されているような
かわいそうなギターにまで責任を負わなければなりませんから、トップの影響を抑え腰折れを防ぎ、
かつ緩め過ぎにならない範囲で「ペグを一回転」とか「1,2,5,6弦のみ1音下げ」のように
それぞれの基準で緩め方を指定しています。
 
以上、やはり明確な答えをスパっと導きだす事は残念ながら出来ませんでした。
いつしかこの「緩める/緩めない論争」に決着が付く事を祈っています。

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