
1966年製 Gibson ES-345。ナンバードPAF/Bigsby搭載。
1959年に登場したGibson ES-345TDは、ES-335の上位機種として開発され、ゴールドパーツやバリトーンスイッチ、ダブルパラレログラム・インレイといった装飾的かつ機能的な特徴を備えた、極めて完成度の高いセミアコースティック・ギターです。その洗練されたルックスと多彩なサウンドバリエーションにより、ヴィンテージ・セミアコの中でも非常に高い人気を誇ります。
特に象徴的なバリトーン・スイッチは、6段階のトーンバリエーションを実現し、幅広いジャンルに対応可能。ブルース界の巨人B.B.キングが愛用した“ルシール”(ES-355を基にしたモデル)にも搭載されていたことから、その実用性と表現力の高さは折り紙付きです。
本器は1966年製の個体で、ナローネック期ならではの握りやすくスリムなネックプロファイルを採用。ピックアップには、特許番号刻印入りの”ステッカード・ナンバードPAF”を搭載し、甘さの中に芯のあるサウンドをアウトプットします。元来ステレオ仕様のES-345ですが、本機は実用性を考慮し、モノラル・アウトへ変更済み。バリトーンスイッチは現状でも問題なく機能します。
そのサウンドは、ES-345ならではの豊かな倍音感と乾いたクリスピーなトーン、そして立ち上がりの鋭さを兼ね備えたもの。ホロー感とソリッドさが絶妙なバランスで共存しており、ブルース、ジャズ、ロックなどあらゆるジャンルでその真価を発揮します。60年代製ならではの枯れた質感は、現行モデルでは再現し得ない魅力です。
さらに、Bigsbyビブラートユニットが搭載されている点にも注目。当時オプション扱いだったこの仕様は、実際にはほとんどがノン・トレモロ仕様で出荷されていたため、Bigsby付きのES-345は極めて希少です。サウンドに表情豊かなニュアンスを加えると同時に、ヴィジュアル面でも圧倒的な存在感を放ちます。
また、映画ファンにはおなじみ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の劇中でマーティ・マクフライが演奏したギターとしてもこのモデルは広く知られています。劇中で使われたのはチェリーレッドの個体でしたが、本機はよりクラシカルで落ち着きのあるサンバーストフィニッシュ。経年変化によって深みを増したトップの色合いは、まさにヴィンテージならではの風格を感じさせます。
約60年の歳月を経た本機ですが、演奏性・電装系ともにコンディションは良好。外観には相応のウェアやウェザーチェックが見られますが、それらも含めて”使い込まれた名器”ならではの魅力として映えます。
市場でも流通数が少ないBigsby付き”ES-345″。しかも60年代中期のナンバードモデル。お探しだった方はこの機会をお見逃しなく。