コンポーネントギターの雄として知られるサドウスキー(Sadowsky)は、
フィラデルフィアでリペアマンとしてのキャリアを積んできたロジャー・サドウスキーが独立し、
1979年にニューヨークのマンハッタンにショップを開いた事から始まります。
もともとはベースの修理専門で、マーカス・ミラーのジャズベースはロジャーがアクティブに改造しています。
マンハッタンには当時から楽器店が多くありましたが、ヴィンテージには修理や調整が必要なものが多く、名工として知られていた彼の元には買ったばかりの楽器が次々と預けられていきます。
ちなみに89年まで在籍していたJ.W.ブラック(=後のフェンダーカスタムショップ、シニアマスタービルダー)はジャコ・パストリアスのベースを修理していました。
80年代から自社ブランドの楽器を発表していきますが、
本来リペアショップであるという歴史に深いこだわりを持っており、木材加工や木工、塗装、
ピックアップ製造は全てそれぞれ信頼の置けるメーカーに特注、サドウスキー工房ではパーツを組み合わせて調整し、完成させるのみ、というスタイルで生産しています。
しかしカネにものを言わせて豪華なパーツを寄せ集めるだけではなく、
最終的な組み込みと調整を熟練した職人の技術で仕上げる事で、高品位のベース/ギターを生産しています。
サドウスキーの名を世界に知らしめたのはプリアンプの性能で、ノイズの少ない、音像のハッキリした、
サウンドメイキングの幅をぐんと広げることのできる極めて優秀なものです。
しかしこれを切ってパッシブにしても音がいいので、それだけ基本性能が高い楽器であることが解ります。
ロジャー自身の信念として「軽いボディ材は音響特性が良い」というものがあるようで、
ボディを作るスワンプアッシュやアルダーは軽量なものが選ばれます。
このコンセプトは長野県で木工、東京で完成させるメトロラインにも受け継がれていますが、
理想的なマテリアルは年々入手困難になっているようです。
現在のメトロラインは、かつてはサドウスキー・トーキョー(Sadowsky Tokyo)
またはサドウスキーTYO(Sadowsky TYO)というブランド名で、本家サドウスキーに勤めていた菊池嘉幸氏が中心となり、サドウスキーのコンセプトをそのままに価格を落とした楽器を製造しています。
ブランド立ち上げ当初は気合いが入りすぎたようで、出来が良すぎて本家サドウスキーからクレームが来たと言います。
東京の「二桁シリアル」は本家に迫るクオリティがある、ということはマニアの間では常識です。
今では「三桁シリアル」にもプレミアムがついているようです。