セミアコやフルアコといったいわゆる「箱もの」のエレキギターは、使用できるジャンルを多少選びますが、サウンドの空気感がとても気持ちがよく、特に3ピースなど小編成のバンドサウンドを有機的に響かせることができるので、3~4人編成のバンドをやっている方には是非おすすめしたいアイテムです。
今回の題材「Rickenbacker(=リッケンバッカー)」もその一つです。
筆者はリッケンの360WBというモデルをバンドのメインとして使っていた時期がありました。
そのバンドではコード楽器が自分ひとりでしたので、
セミアコ独特の 「寂しくない、包んでくれるクリーン」に物凄く助けられました。
リッケンのギターは他のメーカーの追随を許さない独創性といいますか独走性といいますか、
眩しいほどに際立ったキャラを持っていて、とても魅力的です。
USAのメーカーですが、 やはりビートルズのイメージが強いためか、イギリス系のイメージになりますね。
外見的な最大の特徴は、ローズ指板なのにペッカペカに塗装がしてある事です。
これの合理的な理由は未だ謎に包まれたままですが、メーカーとしてもいまさら後には引けないのでしょう。「いちいちオイルメンテしなくてもいい」というのは利点かもしれませんが。
ピックガードが二重になっているところもルックス上のポイントです。
ボリューム、トーンなどアッセンブリ(=回路)を設置する土台としての一枚目、 指置きとして使いやすいように、位置を上げて配置した二枚目、という設計のおかげで、 ストラトから持ち替えても割と抵抗なく演奏できます。
ロッドカバーを開けると、そこにはなんとトラスロッドが二本も。
ネックのねじれまで調整できる反面、極めてシビアな調整が求められますので、
これを見せるたびにリペアマンがうんざりとした顔を見せてくれます。
アッセンブリも独特です。基本はPUセレクタとポットが5つ。フロント、リアそれぞれのPUのボリューム、トーン、そして「謎のつまみ(=フィフスコントロール)」です。通常ではフロントPUの音量はものすごく小さく設定されています。
フルボリュームでも物足りないくらいですから、経験の足りない店員さんだと、
うっかり故障品だと判断してしまうくらいです。
しかしこれはオープンコードの演奏にとてもしっくり来ます。
「謎のつまみ」はフロントPUにのみ効くブースターのような役割ですが、
つまみ全開の状態で設定ゼロ、 絞っていくうちに徐々にフロントPUの音量と音圧が上がっていきます。
ボリュームの回路はジャズベースと同じ「ミックス回路」で、
フロントとリアの音量を好みに合わせてブレンドして出力できます。
これはグレッチでも同様ですが、ギブソン系のギターにはない機能です。
レトロ感があってかっこいいリッケンですが、「オレ流」を貫き通すようなスピリットを感じました。
ここまでオリジナルにこだわるメーカーもなかなかないと思わせてくれます。