サウンドにこだわるギター弾きは、ピックにもこだわるものです。 弾きやすさはもちろんですが、
ピックは弦と衝突させるものですから得に「アタック音」を決定づける重要な要素です。
ですからあまり弾きやすさばかりに固執してしまうと、
例え楽器がよくてもバンドに埋もれてしまう抜けないサウンドしか出せない、なんてこともあります。
今回はピックの素材を二つ紹介します。
ピックはギター本体に比べて持ち替える経済的ハードルが極めて低いので、
これ以外にもいろいろなバリエーションを揃えておく事をお勧めします。
ギターでは「鼈甲(=べっこう。ウミガメの甲羅。)」がピック素材としては最高だと考えられてきました。
ワシントン条約上の規制により現在とても高価ですが、耐摩耗性に優れており、
また生物由来の素材であるため指に馴染みやすく、根強いファンがいます。
現在では代替素材として「ウルテム」が開発されており、
アタック感とサウンドは鼈甲と変わらない、ということで支持を集めています。
鼈甲やウルテムの「耐摩耗性」は、弦をヒットした時に「滑り」として作用します。
弦に引っかからないから弾きやすく、またそれゆえ丸いアタック感のあるサウンドになります。
ちなみにアコギ弾き御用達の「クレイトン」社のピックは純粋なウルテムではなく、
爪で弾いた音に近くなるように素材をアレンジしており、若干食いつき感があります。
一方、人工素材として最も歴史があるのは「セルロイド」です。
フェンダー、ギブソン、マーチンといった名だたる老舗ギターメーカーがこの素材のピックを製造しています。
この素材は摩耗しやすく、下手すれば割れてしまう事もありますが、
鼈甲やウルテムの「滑り」と対をなす「食いつき」という特徴があります。
弦をヒットした時に一瞬弦に食いつくので、独特の鋭いアタック音が生まれるのです。
この鋭いアタック音を「ペチペチ音」として嫌がる人もいるようですが、
この「ペチペチ」が「抜け」の作用を生みます。 音抜けに悩んでいる方には是非試して欲しい素材です。
しかし弦に引っかかる感触が強いので、速弾きを多用するプレイヤーには敬遠されているようです。
筆者の経験上、最も滑るピックはウルテムで、最も食いつくピックはセルロイドです。
ナイロンやデルリン、トーテックスなど他にも色々な素材がありますが、「滑りと食いつき」で考えた場合、たいがいこのふたつの間のどこかに納まります。
ですからお気に入りのピックの他に、ウルテムとセルロイドを一枚ずつ加えておく事をお勧めします。
また、トライアングル(=おにぎり型)よりティアドロップ(=涙型)が、
ティアドロップよりホームベース型が、よりアタックが立ちます。
ホームベースは演奏内容を選ぶ形状ですのでお勧めはできませんが、キャラのしっかり立った面白さがありますよ。