ヴィンテージギターの音こそが至高だと思いこそすれ、既に過去のものでもあります。 音楽は変わっていきますし、新たな楽器が生まれていますし、技術は日々進歩しています。 後発の楽器が常に劣っているわけではありません。
例えばベースにおいてはかなり顕著ですが、「アクティブサーキット」、「多弦」というもはや一般化した仕様は、ベースの歴史の上では比較的新しい存在であり、ヴィンテージでは存在しません。
アクティブサーキットならではの密度感のあるサウンド、ローBのずっしりとした低音は、
ヴィンテージサウンドに取って代わることができます。
一方ギターにおいては、いまだにレスポール、ストラト、テレキャスといった
いわゆるスタンダードなスタイルの楽器が主流です。
これらがヴィンテージに勝ることは残念ながら理論上ありえませんが、 これらスタンダード系に次ぐ、
いわゆるフロイド・ローズ(=正しくは“ダブルロッキング・トレモロ・システム”です。
“フロイド・ローズ”は登録商標です)はヴィンテージには存在しません。
ただし、フロイド・ローズの構造がサウンド面で優れているかといえば、そうでもありません。
フロイド・ローズは激しいアーミングとチューニングの安定を両立させるためのシステムであり、
結果的に「フロイド・ローズの音」はできましたが、それが欲しくて作られたわけではありませんね。
残念ながら一般化するほど普及していませんが、
スタインバーガー(Steinberger)を代表とするヘッドレスギターは革命的な存在です。
そもそも材料が木ではないという画期的な設計。
本体がとても小さくなりますから、 電車での移動がとても助かります(サウンドのメリットではありませんけど)。
また、木材の量でサウンドが左右されるという定説を否定したパーカー(Parker)、YAMAHAのRGX-A2なども、常識はずれな楽器本体の軽さを実現しており、野心的なプロダクツでありながら一定の支持を集めています。
RGX-A2は10万円を切る手ごろな価格ですが、 ローリー寺西さん、ANGRAのラファエル・ビッテンコート氏、Man With A MissionのJean-Ken Johnny氏などがステージでも使用しており、
プロの使用に耐えることのできる楽器なのだということがわかります。
こうしてみると、ギターにおいてはサウンド面よりも利便性において、ヴィンテージに勝る楽器が多くあることがわかります。
サイコーにイイ音が欲しかったらヴィンテージを選ばざるを得ない現状に変わりはありませんが、
今後の技術の進歩により、 ヴィンテージに匹敵するサウンドが得られるギターが作られるのも、
遠からざることだと思われます。