フェンダー(Fender)のストラトキャスター(StratoCaster)には「シンクロナイズド・トレモロユニット(=アーム)」が標準装備されており、大きな特徴となっています。
ストラトではアームを使って細かくビブラートをかける事を「トレモロ(=現代では「アーミング」)」と言い、ジミ・ヘンドリックスをはじめジェフ・ベック、リッチー・ブラックモアなど多くの名手によって、このトレモロを用いた数々の名演が残されています。
ちなみにエリック・クラプトンはアームを全く使わず、常にブリッジからアームは外しています。
これに気がついたフェンダーのスタッフが、
元からアームのついていない(=ハードテイル、フィクストブリッジ、などといいます) ストラトをクラプトンに進呈した所、「音が違う」と言われて返されたそうです。
裏のバネの響きなど、トレモロ独特の響きが欲しかったようですね。
このトレモロユニットにはフェンダーのパテント(=特許)がかなり反映されていて、
他社の製品では再現する事が許されていない機能があります。
これにより、フェンダーではないメーカーのストラトユーザーの筆者としては、
フェンダーユーザーをうらやましく思うことがあります。
他のメーカーのアームは、楽器をケースにしまう時には邪魔になるのでいちいち外さなければなりませんが、フェンダーの場合には、いちいち外す必要がありません。
フェンダーのトレモロユニットではアームの取り付け角度に工夫がされていて(=特許)、
アームを使わない位置(=ジャック付近)まで持っていくと自然にボディに近づいて、収納の邪魔にならないようになります。
アームを使う時にはこれがウマい事使いやすい所に来ます。
また、アームにはネジが切ってあり、ブリッジの穴に当ててくるくる廻して安定させますが、
廻していくに連れて少しずつトルクがかかるようになります(=特許)。
これは原理としては非常にシンプルで、アームを差す穴の中に小さなスプリングが入れられており、
廻されるアームがネジで深く入っていくに連れてスプリングに力がかかっていく仕組みです。
新品で店に並んでいるフェンダーストラトのアームの穴にシールが貼られているのを見た事があるでしょうか。
コレは、中のスプリングが出て行ってしまわないようにしています。
ですからコレを知らずにシールをはがしてしまうと、知らないうちに内部のスプリングをなくしてしまうこともあります。
フェンダー以外のブリッジではこのような機能を使う事が出来ませんが、スプリングを買う事は出来るので、トルク調節ができるようにすることだけは出来ます。
他社製品ではオリジナルフロイドローズのようにネジの締め加減に幅を持たせたり、
アイバニーズやウィルキンソン(=ゴトー)のようにポリキャップで摩擦を稼いだりして、トルク調節の工夫をしています。