最近のギター界においては「スチューデントモデル(=学生仕様)」というより
「エントリークラス(=入門機)」という言い方の方が一般的のようですね。
成人してからもギターを始めたばかりなら自分は学生というイメージがつきにくいからでしょうか。
直球な表現で「廉価版」と言う事もありますが、わざわざ英訳して「チープ・エディション(=Cheap Edition)」とは言いません。
エントリークラスには「ひとまず楽器を始めるために買いやすい価格(=廉価版)である」ことと「操作がシンプルで扱いやすい」ことの二つが求められます。
エレキギターではフェンダー(Fender)に対するスクワイア(Squire)、ギブソン(Gibson)に対するエピフォン(Epiphone)のように、同一仕様ながら価格を抑えたブランドができています。
アイバニーズ(Ibanez)やミュージックマン(Music Man)などにも廉価版のブランドがありますね。
現代のエントリークラスは「同一仕様で低価格」が基本ですが、かつては仕様変更によって
シンプルな操作性と低価格を狙ったモデルが一般的でした。
ギブソンのレスポールジュニアはボディトップにメイプルを貼らず、ピックアップをP-90一個だけにし、ブリッジはバータイプ、ポジションマークもドットにして、シンプルな操作と低価格を実現しています。
結果として独特のサウンドを得る事のできる楽器ができましたから、本来のレスポールとはまた違った個性のある楽器として一軍起用しているミュージシャンも多いですね。
一方チャー(竹中尚人)氏の使用でも有名なフェンダーのムスタングは、ボディサイズを小さくし、ネックも短くして木材を節約、ピックアップは2基、マスターボリューム/トーンの仕様でパーツ点数を減らしていますが、ブリッジには専用の「ダイナミックビブラート」が配置されています。
このダイナミックビブラートは設置する際にボディを貫く穴をあけなくてもいいので、
ストラトキャスターに採用されている「シンクロナイズド・トレモロ」に対して取り付け作業が合理化されるというアドバンテージがあります。
大変軽いタッチでアーミングができる優秀なユニットだったのですが、チューニングが不安定で一般化しえなかったのが残念です。
フェイズが出せる独特の二つのスライドスイッチにしても、「ピックアップの配線を通すボディのザグりを利用して配置できる」という合理化ありきのセレクトです。
合理化と低価格化を目的に、全く新しいプロダクツを提案する開発力。現代の感覚では驚愕に値しますね。
結果としてこれら昔のエントリークラスは、本家のレスポールやストラトキャスター程ではないにしても、プロの仕様に耐えるサウンドと愛すべき個性を兼ね備える、魅力ある楽器です。